マツモトトモ『キス』(1)より

「とにかく愛したいんだっ!」

 生中を叩きつけて言うことかそれが。ダンッて言ったぞダンッて。

「っていうか愛してるつもりなんだよ!?でもわかってくんねえ!」

 主語と目的語をつけろ酔っ払い。飲んでも酔えねぇこっちの身にもなれよ。

「昔からそうなんだよ。アンタの愛情は分かり難いとかどうとかこうとか・・・」


 あー確かによくわからん奴だよなあ。
 恋人作らんの?と聞いても「惚れてる奴がいる」の一点張り。
 でも見たところ女ッ気もないし。
 たまーに私に電話かけてきちゃあ飲みに連れ出すくせに
 こっちが弱ってる時も手出そうとしないし。まあだから信用してんだけどさ。
 ゲイなのか?と思って聞いてみたら死ぬほど怒られたな。
 まあ友達としてなかなか心配な奴ではあるよなー。
 しかし愛したいかあ。なかなかいいこと言うなあ。


『アンタの愛し方ってどんなんよ』

「・・・慈しむことだ」

 ほー。慈しむかあ。いいねぇいいねぇ。
 そーいやこいつ変なとこで優しいよなぁ。
 飲み屋入ったら必ずソファじゃない方に先に座ったり。狙ってやってんのかね。
 シモネタ大好きでだらだら喋るの好きなのに
 こっちがヘコんでるときは黙って話聞いてるとかさ。
 よくわからんやつだ。謎としか言いようがない。

 でも慈しむかあ。慈しまれたいもんだね。


『うん、シラフのときに聞きなおしてやるわ』

 超笑顔で。
 気づいてるけどこっちからは言ってやんね。私Sだし。